甲状腺機能低下症の代表が橋本病です。
甲状腺機能低下症は、バセドウ病と正反対で、甲状腺ホルモンの量が不足して、新陳代謝が低下し全てが老けていくような症状がみられます。無気力で頭の働きが鈍くなり、忘れっぽく、ひどくなると認知症の原因の1つにもなります。寒がりで皮膚も乾燥してカサカサになったり、体全体がむくみ、髪も抜け、眠気がありボーッとして活動的でなくなります。
橋本病も甲状腺臓器特異性自己免疫疾患の1つで、体質の変化により甲状腺を異物とみなして甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体TgAb、抗甲状腺ペルオキシダーゼTPOAb)ができます。この抗体が甲状腺だけを破壊していき、徐々に甲状腺機能低下症になっていきます。
しかし、甲状腺が腫れたり、のどの違和感を訴え橋本病と診断されても、すべての橋本病が甲状腺機能低下症を伴うわけではありません。約40%の人に機能異常があります。
歯科治療時の注意点
◯甲状腺機能低下のために全身の代謝活動が低下しているために創傷治癒遅延が予想される*一度に広範囲の外科処置はさけ、術後管理を十分行う
◯薬物の代謝機能が低下している
◯抗生物質、鎮痛剤の投与は少なめに
◯中枢神経抑制作用のある鎮静剤(セルシン)などの使用は注意!
◯代謝低下より血管壁にムコ多糖類の沈着がおこりやすい◯高齢者では高コレステロール血症と重なり動脈硬化がおこりやすい*心機能の低下*冠動脈狭窄などが起こった場合わかりにくい*狭心症、心筋梗塞などに注意!またエピネフリン含有局所麻酔薬の使用やストレスを与えないように注意!
◯抗生剤や鎮痛剤を投与する際、胃粘膜保護剤などを一緒に処方することがあるが、アルサルミン(消化性潰瘍治療薬)、コランチル(消化性潰瘍治療薬)マーロックス(消化性潰瘍治療薬)など水酸化アルミニウムを含有する薬剤は腸管からの甲状腺ホルモンの吸収を妨げるので使用しない
◯甲状腺ホルモン剤を服用している場合、クマリン系抗凝血剤(ワーファリン)、交感神経刺激剤(エピネフリン、エフェドリン)などの作用を増強することがあるので注意!