一般的に口腔内全体では、酸性の飲食物を摂取すると、ほんの一瞬pHが低下しますが、唾液の作用でただちに中和されるので、歯面が脱灰することはほとんどありません。
しかし、歯面に付着したプラーク内では、糖質がプラーク内に取り込まれるとミュータンス菌や乳酸桿菌、アクチノマイセスのような細菌が糖を分解して酸を作るため、pHの低下が続きます。
pHは飲食直後から低下し始め、約10分で下限に達します。プラークは唾液の影響、つまり緩衝作用(中和)を受けにくいため、低いpHを維持しながら徐々に回復し、約60分で元に戻ります。
飲食後すぐにブラッシングをおこないプラークを除去すれば、歯面が唾液にさらされて脱灰が停止し、再石灰化が始まります。さらにブラッシング時にフッ化物を継続的に使用すれば、歯面の臨界pH値を低下させ、脱灰量を減らすことができます。
逆に、停滞性の高い食品を摂取したり、加齢などによる口腔周囲筋や反射神経などの機能の低下や、唾液の減少が怒ったりすると、pHの回復が遅れてしまうので脱灰量は多くなります。
また、歯根面が露出すると、臨界pH値がエナメル質より3倍も高い象牙質では、脱灰量はさらに多くなります。
飲食後にノンシュガーのガムを噛むと、唾液の分泌が促進され、糖質の口腔内からの排出が促進されるとともに、唾液の緩衝作用でpHの回復が早まります。しかし、噛む時間が10分程度では、噛み終わったあとに再びpHが低下し始めます。pH値の回復を維持し再石灰化を促進するには20分以上噛み続けることで効果が出ます。