偏った視点でお勧めするドラマ、映画3選。
2023.04.10
みなさんこんにちは!
私は昔から映画やドラマを観るのが好きでたくさんの作品をみてきました。
優れた映像作品はセリフやナレーションで登場人物の心情やキャラクターを説明するのではなく、
役者の表情や目線や所作(もっと細かく言えば照明や壁紙などでも)など映像でしかできない表現でそれを語る事ができているというのが条件にあると思います。
その状況説明や登場人物の心情を表すための小道具として、歯磨きやフロスなどが使われていると、職業柄「おっ!これは!!」と嬉しくなって、よく覚えていたりします。
中でも私が映画やドラマを観てきた中で、歯ブラシやフロスをうまく使った作品をご紹介したいと思います。
まず一つ目は「ブレイキングバッド」というネットフリックスで配信されているドラマです。
だいぶ昔の作品ですが、この作品をきっかけにメキシコ麻薬カルテルものの映画やドラマが量産されるきっかけとなった名作です。
ニューメキシコ州アルバカーキに住むウォルター・ホワイトはお給料の低い高校の化学教師をしてますが、彼にはもうすぐ出産を控える身重の妻と脳性まひの障がいを持つ長男がいます。
そんな中ウォルターは体調を崩して病院に行くと余命わずかのガンにかかっている事を宣告されてしまいます。
障がいのある長男に生まれたばかりの赤ん坊を抱えた妻を残して自分が死んでしまったら家族はどうなるんだ、
家族のためにお金を残さないと・・と考えたウォルターは化学教師の知識を活かして合成麻薬を作って売る事を企てます。
この合成麻薬が品質が良く、闇社会で評判となり取引されてどんどんウォルターに大金が入ってきます。
それでめでたしとは当然行かず、麻薬カルテルの恐ろしい争いに巻き込まれたり、警察に追われたり大変なことになっていきます。
このドラマの第5シーズンの4話で合成麻薬を作っている事を妻に知られ、その世界から足を洗うと誓ったものの、
再び麻薬作りを始めて羽振りが良くなり高級車を2台も買った事で妻に麻薬を作るのを再開したのかと洗面所で問われるシーンがあります。
その時妻のスカイラーの指には糸タイプフロスが巻かれ、その糸が強く指に食い込み、指が紫色になっている様子がアップになったシーンから始まります。
その糸が食い込んだ紫色の指が夫への不信感や怒りを表現していて、私は「フロスを感情表現に使った画期的なシーン」と認定しました。
もうひとつは「サイドウェイ」というアレクサンダー・ペイン監督の作品です。日本でリメイクもされていますね。
ポール・ジアマッティが演じる妻に離婚された冴えない国語教師が、結婚を控えたチャラい友人とワイナリーをバチェラー旅をするというロードムービーなのですが、
映画の冒頭でこの国語教師がいかに不器用で冴えないかというのを彼の朝の身支度で手際よく説明していきます。
その中で彼がフロスを使うシーンがあるんですが、朝日の差すきれいな洗面所で糸タイプのフロスを本来短い間隔で持って細かく動かすものなんですが、
彼は長く持ち楽器の弦を弾くようにベンベンと不器用にフロスを使うのです。その糸から水しぶきが飛んで朝日に当たる様子が非常に美しいのですが、
「君、何年フロスやってきたんだ??」と言いたくなるような鈍くささで、これもフロスを小道具に使った素晴らしい演出だと思います。
アレクサンダー・ペインの作品は最新作以外はどれも素晴らしいのでお勧めです。
他にも「フレンチアルプスで起きたこと」という世の家庭を持つ男性が見たらいたたまれなくなる意地悪な映画があるのですが、
富裕層の家族が高級ホテルでスキーリゾートを楽しむ中で父親の面子が丸潰れになるハプニングがあり、そこから状況がどんどん険悪になっていくのですが、
映画の要所要所で家族揃って電動歯ブラシのソニッケアーを使って歯磨きをするシーンが差し込まれるんですが、
わざわざ家族分のソニッケアーをホテルに持ち込むというお母さんの融通の利かなさとか、家族の力関係の変化に応じて4人家族の間隔が変わったり、
同じようなシーンを演出を変えて見せる事でなんともいえない可笑しさを感じて、この監督意地悪だなー(褒めています)と感心します。
他にも色々ありますが、紹介した作品はフロス、歯ブラシ云々に関係なくとても面白い作品です。配信やレンタルでぜひ楽しんでみてください。