人間は、食べものや水などを飲みこむ時、口を閉じて上下の歯を接触させて下のあごを固定しています。口を開けたままでは、嚥下することは非常に困難なはずです。それらの生理的な運動をする時ばかりではなく、瞬発的に力を発揮しなければならない時には、口を閉じてしっかりと奥歯を噛みしめます。
それでないと、強い力は発揮できません。「歯をくいしばる」という言葉はここからきています。 スポーツ選手にとって歯は命です。一流選手ほど、歯にかかってくる負担は相当なものです。歯への力のかかり具合(咬合力、咬合圧)はスポーツの種類と内容によって異なりますが、瞬間に筋肉の力を最大限に発揮することを要求されるスポーツにおいては、その依存度は顕著です。 たとえば、相撲の力士にとって、立ち合いのぶつかり合い、瞬間の勝負どころでの渾身の力をふりしぼっての攻防は、見ていても思わず手に汗を握ってしまいます。 奥歯を噛みしめた時の咬合圧は、平均50~70kgですが、力士では100kgを超えていると言われています。体を接触させる機会の多い激しいスポーツは、歯が折れたり、口の中が傷ついたり、あごや顔面に損傷をを受ける危険性があり、スポーツ事故を防止する目的でマウスピースをつけることが多かったのですが、最近ではくいしばりによる歯のダメージを和らげるのと、より効率よくくいしばって力を出しやすくするする目的のスポーツ用のマウスピースもあります。