新春のお慶びを申し上げます。
皆さん、新しい年が始まりました。
今年一年間幸多き年となりますように。
今日は、梨と歯痛の話しです。(落語こぼれ噺)
江戸時代、歯が痛くなると口中医という現代の歯科医院のようなところで、主に抜歯をしてもらっていましたが、一般庶民には治療費が高く、通うことができなかったようです。
では、どうしたのか? 所謂、加持祈祷を行ったのです。
具体的には、「九頭龍大神を祀っている戸隠神社(長野県長野市)で、歯を患った者が3年間『梨』を絶って参拝すると治る」という言い伝えがあり、信仰したようです。
戸隠神社に行くことができない江戸庶民は、梨の実に自分の名前と痛む歯の場所を、例えば「右上の奥から3番目」などと書いてから神社のある戸隠山の方角を向いてお祈りし、その後、梨の実を川へ流したと言われています。
では、なぜ梨の実を絶ったのでしょうか?
昔、梨の実に含まれている酸で歯が溶けると思われていたようで、また、梨の実を食べるとその酸によって歯が白くなるとも考えられていたようです。
現在では、梨の実に含まれているソルビトールはキシリトールと同じ糖アルコールの仲間で、むし歯菌の増殖を抑える働きがあると言われています。
時代が変わると果物の立場も色々と変化するようです。
因みに、落語にこの「むし歯と梨の実」が登場するのは「佃祭(ウィキペディアが開きます)」という噺です。
余談ですが、梨の実は昔は亜梨(あり)の実と言いました。「なし」という言葉を忌み嫌ったためです。その他にも、「スル」という言葉も嫌って、「スルメ」を「アタリメ」、「すり鉢」を「当たり鉢」と言い換えていました。
日本人は何て縁起をかつぐ民族だろうと、つくづく思いますね。
本年も宜しくお願い致します。