冷たいものを食べたり飲んだりしたときに歯が痛むことはありませんか。
知覚過敏もしくは虫歯になっているかもしれません。それぞれどのような病気なのか説明していきます。
〇知覚過敏
冷たいものを食べたり飲んだりするときにしみたり、痛んだりする場合は知覚過敏の可能性があります。
知覚過敏は歯の表面が削れたり、歯茎がさがったりすることで、本来ならば隠れているはずの象牙質が露出することによって、歯の中に通っている神経に冷たいものの刺激が伝わってしまいキーンとした痛みがでてしまう状態です。
知覚過敏になってしまう原因
知覚過敏になってしまう原因には 1歯肉退縮 2歯ぎしり・食いしばり 3過剰な歯磨き 4くさび状欠損 があります。
1 歯肉退縮
歯肉退縮とは歯茎がもともとあるべき位置よりも下がっている状態をさします。
歯茎がさがってしまうと、本来歯茎で隠れているはずの根っこが出てきてしまいます。根っこの表面はセメント質という比較的やわらかい組織で覆われています。セメント質は強い歯磨きなどで削れてしまい、その奥にある象牙質という組織が顔をだしてしまいます。象牙質は歯の神経とつながる象牙細管という無数の管をもっていますので、象牙質が顔を出してしまうと外からの刺激がこの管を通して神経に作用し、痛みがでてしまいます。つまり、加齢によって歯茎がさがってしまいそこに強い力で歯磨きをしてしまうと知覚過敏になりやすくなります。
また、歯周病によっても歯茎は下がりますし、健康な歯茎の方でも強い力で歯を磨いてしまうと歯茎はさがってしまいます。そのため知覚過敏は若い方からご年配の方までどなたでもおこりうる疾患です。
2、3、4 歯ぎしり・食いしばり、過剰な歯磨き、くさび状欠損
歯の根元はくびれており、強い歯ぎしりをすると力がすべてこのくびれに集中し、歯の表面の硬いエナメル質をはがしてしまいます。
強い力が加わり続けるとエナメル質の奥にある象牙質もけずれてしまい、神経が通っている空間に刺激が伝わって知覚過敏の症状がでます。また、歯ぎしりだけでなく過剰な力のこもった歯磨きなどでも歯の表面はけずれてしまいます。歯ぎしりや過剰な歯磨きが長期間おこなわれると、くさび状欠損というものができます。くさび状欠損とは図のように歯の根元がくさびのような形にえぐれてしまう状態をさします。
ご自身では歯ぎしりをしているかわからない、という方もくさび状欠損がある場合は歯ぎしりをしている可能性が高いです。
知覚過敏の治療
1.正しい歯磨きを習得
気づかないうちに力をいれて歯磨きをしてしまっている方が多くいらっしゃいます。
上記のように強すぎる歯磨きは知覚過敏の原因になりますので、正しい歯磨きを一緒に習得していきましょう。目安は歯ブラシの毛先が曲がってしまわないくらいの力です。力を入れないと汚れが落ちない、歯がザラザラしているという方は歯ブラシの硬さや歯磨き粉の種類を見直すことも重要です。
ご来院の際にお気軽にご相談ください。また、歯ブラシがヘタっていないかチェックする必要があります。毛先が開いてしまっている場合は替え時です。一度ご自身で確認してみてください。
2.しみ止めをぬる
くさび状欠損はないけれど歯肉退縮などにより知覚過敏の症状がでている方にはしみ止めのお薬をぬります。
これはコーティング剤のようなもので、表面を薬でうすく覆い外部からの刺激を遮断します。コーティングですので永久的にもつものではなく、剥がれてしまうとまた症状がでてくることがあります。
3.くさび状欠損部の治療
くさび状欠損がある方は、その部分に詰め物をすることで外部からの刺激を遮断し、痛みを防ぎます。詰め物にはプラスチックの白い材料を使います。
本院ではマイクロと呼ばれる顕微鏡を使って、隙間がないよう精密に詰め物をすることができます。
4.歯周病の治療
歯周病で歯肉退縮がおこっている方はこれ以上歯肉退縮が進まないように、歯周病の治療もあわせて行います。
歯周病は放っておくと歯茎が腫れて痛みが出たり、気づかないうちに顎の骨がとけて歯がグラグラしてきます。しっかりと治していきましょう。
5.マウスピース
くさび状欠損があり、歯ぎしりがひどい方にはマウスピース治療をお勧めしています。
夜間、寝るときにマウスピースをはめることで歯に伝わる刺激を軽減します。定期健診の際にはマウスピースの調整も一緒におこないます。
6.神経を抜く
知覚過敏は神経に直接外部刺激が届くことで痛みがでます。
そのため刺激が強すぎて神経の炎症がひどいと痛みがおさまらず、シミ止めなどが効かなくなってしまいます。その場合は神経をとる処置をして痛まないようにします。
また、治療後に一時的に知覚過敏の症状が出る場合があります。
歯石除去後やホワイトニング後です。歯石で覆われていた象牙質が除去によって露出することで痛んだり、ホワイトニングの薬剤で表面の歯質がはがれたりすることで痛みがでます。しかしどちらの場合も時間の経過とともに唾液に含まれるカルシウムなどにより再石灰化がおこり痛みはなくなっていきます。
歯がしみると飲み物を飲んだり食事の際に不便ですよね。我慢せずに一度ご相談にいらしてください。
〇むし歯
冷たいもので痛いときは中等度の虫歯(C2)になっているかもしれません。
虫歯は、虫歯菌が糖を分解してできた酸によって歯が溶かされてしまい、歯に穴があいてしまう状態です。また、虫歯にはその大きさによって段階があり、冷たいもので痛む場合は中等度以上の虫歯(C2)になっているかもしれません。
中等度の虫歯(C2)とは
象牙質まで虫歯が進行した状態です。冷たいものや甘いもので痛みがでてきます。
中等度の虫歯なので麻酔をして虫歯の部分を削り、その大きさが小さければCR、大きければセラミックや金属でできたインレー・アンレーという詰め物をいれて治します。
虫歯の治療法
麻酔
当院では痛くない麻酔を心がけています。
細い針を使用することで針がささるときの痛みを軽減し、常温の麻酔薬をゆっくりと注入することで歯肉組織にかかる圧を軽減しています。また刺入時の痛みを和らげるために、表面麻酔といって塗るタイプの麻酔や貼るタイプの麻酔も併用しています。
CR
白いプラスチックの詰め物で、虫歯を削ったその日に行うことができます。
インレー
虫歯の範囲が歯の溝の部分にのみ広がっている場合に行います。
セラミックインレー(白い陶材)や金属、CADCAMインレー(白いプラスチック製)などがあります。それぞれ利点欠点がありますので歯科医院で詳しくご説明します。
アンレー
虫歯の範囲が溝の部分を越えて歯の山部分まで広がっている場合に行います。
歯の山部分は大きな力に耐えられる材料でなくてはならないため、セラミックや金属の詰め物(銀色、金色)で回復します。
虫歯は放っておいても治ることはなく、どんどんと大きくなってしまいます。
また、小さい虫歯だと思っていても中まで広がっている場合もあります。痛みがでると治るのに時間もかかってしまいます。虫歯かな?と思ったら出来るだけ早く歯医者さんへいって診てもらってください。早めの治療が歯を長持ちさせることにつながります。