破折とは歯が割れてしまっている状態です。
歯って硬いのに割れるの?と思うかもしれません。実は歯が割れてしまったり、ヒビがはいってしまうことはよくあることなのです。若い人でもおこります。
まずは歯のつくりから説明します。
歯冠部
エナメル質 | 歯の外側にある最も硬い組織で厚さは2~3㎜ほどです。人体の中で一番硬い組織と言われています。95%がカルシウムなどの無機質でできています。 |
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象牙質 | エナメル質の内側にあり、エナメル質より柔らかい組織です。厚さは2㎜ほどです。約70%が無機質で残りが有機質や水分でできています。象牙質には象牙細管という細い管が存在し、神経のお部屋とつながっています。 |
歯髄 | 歯の神経です。エナメル質と象牙質に守られ、歯の最も内側に存在します。血管も存在しており、歯に栄養を与えています。 |
歯根部
セメント質 | 根っこの最も外側はエナメル質ではなく、セメント質で覆われています。歯根膜という組織が入り込んでおり、あごの骨と歯を結び付けています。約60%が無機質でできており、エナメル質ほど硬くはありません。 |
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歯根膜 | セメント質とあごの骨(歯槽骨)の間に存在する軟組織です。噛んだ時の力や衝撃を感知して、クッションのように力を吸収・緩和します。 |
皆さんもとっても硬いものを噛んだ時、とっさにお口をあけて「いたっ!」となったことがあると思います。
噛む力というのはとても強く、思い切り噛むと70キロもの力がでると言われています。そのため硬いものを噛んで回避する能力がなければ、歯は簡単に粉々になってしまいます。この回避するために存在するのが歯根膜です。歯根膜には咬合力を感知する役割があり、過剰な力がかかったときに逃がすことができます。また、歯がすべてエナメル質のようなとても硬い組織のみでできていたらどうなると思いますか?硬いというのは一見とても強く無敵のように感じますが、実は違います。
分散された力に対しては硬さで対抗することができますが、一点に力が集中してしまった時には力を逃がすことができないため脆くなってしまいます。もし歯がすべてエナメル質でできていたら、ガンっと噛んだ力を逃がすことができずに簡単に割れてしまいます。エナメル質の内側にある象牙質や歯髄は弾力があり、力の緩衝材としての役割も果たしているのです。このように、毎日毎日大きな力に耐えられるように、ひとつひとつの歯の組織がうまく働くようにできています。
どんなときに破折するか
では、なぜ歯がわれてしまうのでしょうか。
歯が割れてしまうときというのは、ひとつは治療をして歯がもろくなっている場合、もうひとつは力のバランスが悪い場合です。
〇治療をして歯が脆くなっている場合
むし歯を削って薄くなった歯を想像してみてください。
厚みが薄いと何もしてない歯よりも割れやすくなっているとわかりますよね。また、むし歯を削っただけでなく神経の治療をした歯は、してない歯に比べて歯がとても割れやすくなっています。神経の治療をした歯は枯れ枝のような状態です。枯れ枝は中が空洞でカサカサしており、力を加えるとパキッと簡単に折れてしまいます。
歯の神経をとってしまうと歯に栄養がいかなくなり力が加わると割れてしまいやすいのです。
〇力のバランスが悪い場合
治療をしていない歯でも割れる場合があります。
かみ合わせが悪いと一部に咬合力が集中してしまい、力に耐えられず割れてしまうことがあります。歯をよく見てみると歯の形は前歯と奥歯だけでなく、奥歯どうしも形が違うことがわかります。この形は上の歯と下の歯がしっかりとかみ合うような形になっており、歯をギリギリした場合にも力を負担できるようになっています。
お口の中はとても複雑な器官なのです。むし歯がない、歯周病がないだけでなく歯のバランスも整っていることが大事です。
歯が割れてしまったときの治療
歯が割れてしまったり、ヒビが入ってしまったときはその部位によって治療法は変わってきます。
歯茎に近い部分が少し割れている、といった場合はかけらを取り出して土台をたて被せものをすることで再建することができます。割れている部分が根っこの奥の方になるにしたがって治療は難しくなります。基本的には抜歯になることが多いです。割れてしまった根っこをきれいに抜いて接着剤でくっつけ、抜いた場所に埋め直すという治療法もありますが、この方法はとても歯がもろい状態のため、治ったあとも大きな力を負担することが難しいです。
どの歯が割れているのか、ほかの歯とのバランスはどうかなど、いろいろなことを考えて治療を行うことが重要になります。
歯が割れると痛みもでますし、治療も困難です。
なるべく歯を長持ちさせるためにもむし歯を予防して歯を削る治療を避け、定期健診の際には噛み合わせをみてもらい力のバランスが整っているかを検査することが大切です。かみ合わせの検査は従来の噛んだ位置を赤い印で記録するやり方と、デジタル機器を使用するやり方があります。
さこだ歯科ではデジタル機器も導入しており、どこが噛んでいるのかだけでなく、どのくらいの面積接触してるかも検査することができます。自分のかみ合わせはどうなんだろう、と気になった方はお気軽にご相談ください。