歯茎が赤い、歯茎が痛い、歯茎が膨れている…など“歯茎が腫れている”といっても症状はさまざまです。
歯だけでなく歯茎のトラブルも意外と多いもの。歯茎が腫れて気になるときに考えられる原因と治療法について解説します。
慢性歯周炎
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歯茎が腫れる原因として最も多いのが歯周病です。
上記の写真の左側が正常な歯茎、右側が慢性歯周炎の歯茎です。右側の歯茎は左側に比べると歯の周りが全体的に赤く、腫れぼったくなっているのがわかります。慢性歯周炎とはよく耳にする歯周病、歯槽膿漏と同じものをさします。歯周炎は基本的には慢性の疾患で、長い経過をたどります。写真のような状態でも痛みがないことがほとんどで、気づいたら歯がグラグラとしてきます。
磨き残しにより歯周病菌が歯茎と歯の間(歯周ポケット)で増殖します。それにより歯茎は腫れ、歯を支えている骨がとけていく病気です。
また歯周病は口臭の原因にもなります。歯周病の原因菌は歯茎の中の酸素がない環境で増殖し、嫌な臭いをだします。原因菌を減らし、歯茎が引き締まってくると臭いもおさまってきます。
治療では歯茎の奥底にある歯石をとり、原因菌をできるだけ排除していきます。同時進行で正しい歯磨きの仕方をマスターしてもらいます。歯周炎の一番の原因はプラーク(磨き残し+細菌のかたまり)だからです。歯周炎が慢性の疾患である理由はここにもあります。毎日普通に生活しているだけでお口の汚れはたまっていきます。
その汚れがきれいにできない限り治っていきませんし、たまればまた悪くなってしまうからです。歯科医師や衛生士だけではなく患者さんご自身にも頑張っていただく必要のある疾患です。一緒に根気強く治していきましょう。
急性歯周炎
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歯周炎の中でも急に痛みが出た場合を急性歯周炎といいます。
写真のように1歯だけ腫れることもあります。痛みや腫れ、赤みだけでなく膿がでてくる場合もあります。慢性歯周炎と同じものですが、体調が悪かったり、1歯だけに負担がかかっていたり、大量の磨き残しが集中している場合などにこのような状態になることがあります。
治療としてはまず応急処置として、歯周ポケットの洗浄と薬の塗布を行います。急性症状がなくなったら(痛みがなくなったら)、通常の歯周炎の治療をおこなっていきます。
根尖性歯周炎
写真のように歯茎がぷくっと腫れる場合があります。
これは根尖性歯周炎といって、歯の根っこの先に膿がたまった状態です。神経まで達したむし歯や、神経の治療を行った歯の虫歯が再発した場合、歯が破折したときなどにみられます。また、歯周病とむし歯両方が原因のケースもあります。
治療では根っこの治療を行います。むし歯がある場合はむし歯を取り除き、再発症例の場合は被せものをはずして神経のお部屋をきれいにしていきます。神経のお部屋がきれいになり、原因菌が除去できると、ぷくっとした膨らみもだんだんとなくなってきます。歯周病も同時に発症している方は歯周病の治療も同時におこなっていきます。
智歯周囲炎
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智歯周囲炎とは親知らずの周りの歯茎が炎症をおこしている状態です。
写真では奥歯の後ろの歯茎が盛り上がり、腫れているのがわかります。赤くなったり、痛みが出る場合もあります。親知らずが完全に歯茎にうまっている場合は、親知らずが生えようとして盛り上がり痛みがでます。親知らずの頭が少し見えている場合は、生えようとする炎症+汚れがたまったことによる炎症によって腫れます。
治療では原因除去、という観点で親知らずの抜歯をおすすめしています。親知らずはまっすぐ生えてくる場合であれば無理に抜くことはありませんが、かみ合わせに参加していない場合がほとんどですので抜歯をしても問題ありません。生える途中に虫歯になったり痛みが気になるという方は抜いてしまった方がすっきりする場合もあります。
抜きたくないという方は歯科医院でしっかりと清掃を行い、様子をみていくことになります。ご自身での清掃をしっかりと行っていただくことが大事です。
萌出性歯肉炎
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萌出性歯肉炎とは、歯が生えている途中のお子さんによくみられる歯茎の炎症です。
歯周炎とは少し異なり、歯が生えきったり汚れが除去できると痛みや腫れ・赤みはなくなる可逆性の炎症です。そのため骨がとけたり、放っておいたからといって歯がグラグラしてきたりすることはありません。親知らずの場合と同じで、生えようとして歯が歯茎をおして出る痛みと、汚れがたまって炎症が起きます。
特別な治療は必要なく、汚れがたまらないように歯磨きを頑張っていただくことが一番の治療です。写真のように歯茎がかぶさっている場合は特に磨きづらく、歯茎に歯ブラシがあたって痛みを感じるときがあります。優しい力で丁寧に磨き、最後に親御さんが磨けているかどうかチェックしてあげたり、仕上げ磨きをしてあげると安心です。
歯茎が腫れると気になりますよね。歯茎の腫れはどの場合も磨き残しが大きな原因になります。歯磨きが大事なのがわかりますね。
大人になって歯磨きを習うのが恥ずかしいという方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。正しい歯磨きは難しいのです。ぜひ一度チェックしにいらしてください。