歯の根っこに膿がたまっていると聞くことがあると思います。どういう状態なのか、治療法などについて解説していきます。
歯の根っこに膿がたまっている状態とは
歯科の専門用語では根尖性歯周炎といいます。
噛んだ時に痛みがでたり、歯茎の根本がぷくっと腫れたりします。レントゲン写真を撮影すると根っこの先に黒い影としてうつります。歯の神経が虫歯菌に感染して炎症をおこしてしまい、根の先に膿がたまります。
そもそも膿とは何なのかご存知でしょうか。膿とは白血球など炎症とたたかう細胞(炎症性細胞)の死骸があつまったものです。細菌がはいると身体はこの細菌を排除しようと、炎症性細胞を働かせます。細菌と戦った痕が膿なのです。
つまり根尖性歯周炎とは、むし歯などの細菌が神経にはいりこみ、それを排除しようと身体が頑張った結果炎症がおこり、最終的に膿がたまった状態といえます。
根の先は閉じているのではなく、とても小さな穴が開いています。これを根尖孔といいます。この孔で神経や血管が歯周組織とつながっています。そのため、歯の中でおこった炎症もこの孔を通して歯周組織に広がっていきます。
歯の根に膿がたまりその膿が大きくなっていくと、膿を排出しようとし、膿が歯茎まで到達します。そうなると写真のようにぷくっと歯茎がはれた状態になります。
この膿の袋はにきびのように破れて中から膿が出てくることもあります。しかしにきびとは違い、破れても治ることはなく原因となっている汚染した歯の中から治療しないと治癒しません。
レントゲン写真では硬いものが白く、やわらかいものが黒くうつります。
この写真では金属が最も硬いため詰め物が真っ白にうつっています。歯の根っこの周りを白くもやもやと取り囲んでいるのがあごの骨(歯槽骨)です。
根っこの先の膿はこのように黒くうつります。レントゲン写真を撮影し、このような像が見られた場合、根尖性歯周炎と診断されます。
原因は…
1.むし歯
むし歯が大きくなりすぎると歯の神経まで感染しやがて神経は死んでしまいます。神経が死んでしまった後そのままにしていると、炎症が根の外へとひろがり膿の袋ができあがります。神経が死んでいるのになぜ痛むのか。それは膿の袋が大きくなっていくときに周りの組織を圧迫して痛む場合と、歯根膜という歯と顎骨をつなげている組織も炎症をおこしており噛んだ時に痛みがでる場合とあります。
2.歯周病
歯の中から炎症が広がるだけでなく、歯の周りからも炎症は広がります。それが歯周病から根尖性歯周炎になる場合です。歯周病により歯茎が炎症をおこし、歯の根の先から神経へと炎症が広がっていくのです。この場合は歯周病が感染源のため、根っこの治療と歯周病の治療の両方が必要です。
3.破折
噛んだ衝撃などで歯にひびが入ったり割れてしまった場合、このひびから細菌が入り込み、炎症がおこります。炎症によって神経が死に根尖性歯周炎と移行していきます。
4.外傷
歯をぶつけるなど大きな衝撃が加わると歯の神経が死んでしまうことがあります。神経が死んでしまうと身体にとって神経がいらないものとなるため、身体が異物を排除しようとする過程で膿がたまり根尖性歯周炎になります。
治療はどのようにして行うのか
いわゆる神経の治療を行います。
神経の治療の流れ(むし歯の場合)は、
②針状の器具を使って、感染した根の中を物理的にきれいにしていきます。
③レーザーや超音波で、根の中を洗浄します。
④状態にあわせたお薬を歯の根に入れ、仮の蓋をして次回根の中がきれいになっているかを確認します。きちんときれいになるまでお薬の交換が何度か続きます。
⑤きれいになったら、最終的なお薬を隙間がないようにしっかりとつめます。
⑥土台をたてて被せものをつくっていきます。
※神経のお部屋の形は人それぞれ違います。また枝分かれしていたりととても複雑です。最大限の治療をおこなっても長期化した炎症の場合、治癒しない場合もあります。そのときは歯茎を切開し根っこの先を切断して、きれいにしていきます。それでも治らない場合は抜歯をおこなうこともあります。
再発するの…?
一度根の治療をしたのにまた悪くなった、ということはあります。
お口の中にはたくさんの細菌が存在しています。治療をして可能な限り根っこの中をきれいにしますが、細菌を0にすることはできません。ではなぜ根っこの治療をして治るのかというと、細菌の数をできる限り減らして、ご自身の治癒力が菌を退治できるようにしているからです。
免疫が細菌に負けてしまうと、治療をした歯でも根っこの先に膿がたまってしまうのです。
根尖性歯周炎ではしばらくしたら痛みがなくなることがあります。しかし痛みがなくなったからといって治ったわけではありません。そのままにしておくとどんどん治りが悪くなり、抜かなくてはいけなくなることもあります。歯の疾患は自然と治癒することは決してないのです。
また、症状がなくても膿がたまっている場合もあります。痛みを感じたら来院すること、定期健診でエックス線写真を撮影し膿がたまっていないかを確認することが大切です。