歯科医が扱う主な病気は、虫歯と歯周病(歯槽膿漏症のこと)です。そして今の技術では、少々の虫歯ならば歯を助けることが出来るようになりました。一方歯周病になると、患者さんが御自分で気づかれた時には既に抜歯しか処置が無い場合も多く、50代以後の抜歯の原因はほとんど歯周病といっても過言で無いぐらいです。
この歯周病、口の中の常在細菌(誰の口の中にも普通に存在する雑菌)が増殖しバイオフィルムという状態(これをプラークと呼ぶこともあります)になり、それらが出す毒素に対してそれを無毒化しようとする免疫細胞(白血球やリンパ球など)とのせめぎ合いにより発生する炎症(腫れ)がその病気の本体です。ですから歯周病は細菌集団の増殖により悪化しますが、逆に免疫力の低下があった場合にも悪化がおこります。つまりハミガキなどを行っていても免疫力や抵抗力が低下すれば、歯周病は進行することになります。
そして、タバコはその成分に約4000種類もの化学物質が含まれ、そのなかの有害物質は200種類以上と言われます。中には末梢血管を収縮する物質も含まれハグキへの血液の流れが悪くなり貧血状態となり、免疫細胞の活動を阻害するようです。また吸い込むタバコの煙は高温で乾燥していてそれが直接ハグキや頬の粘膜に当たり乾燥させてしまいハグキの抵抗力を低下させます。タバコは体内のビタミンCを破壊し痛んだ粘膜の回復が遅れます。貧血状態のハグキには、メラニン色素も沈着しハグキは青紫色に変色するため美しさを損ねます。歯の表面にこびりつくタールはザラザラで、細菌がそれを取っ掛かりとしてハグキの隙間に侵入し、表面に症状が出ない間に深刻な症状まで歯周病を進行させ、治療をしても効果が表れなくなり、急速に歯を失います。