舌苔とは
舌苔とは、舌の表面にある舌乳頭(舌の表面にある凸凹)に付着した苔のようなものです。鏡で見ると、舌の表面が白くなっているのが分かります。高齢者に限らず、誰にでもできるものですが、口腔機能が低下したり、自分でのケアが難しくなったりしている高齢者は、この舌苔が分厚くなってしまうことがあります。
舌の真ん中に薄く付着している程度であれば心配ありませんが、厚くなってきた場合や口腔内のトラブルが引き起こされている場合には、適切に対応するといいでしょう。
舌苔の正体
舌苔の正体は、舌乳頭の間に付着した、様々な細菌や古くなった口の中の粘膜、食べ物のカスなどの汚れが集まったものです。タンパク質を多く含んでいます。
舌苔の原因
舌苔は、できやすい人とできにくい人がいます。その差は口の中の潤いです。汚れを洗い流してくれる唾液の分泌量が少なかったり、口の中が渇いていたりすると舌苔ができやすくなります。 例えば、
タバコの吸いすぎ
口呼吸
ストレス
食事中にあまり噛まない
といったことによる唾液の分泌量の減少や口の中の乾燥が、舌苔が増える原因です。
厚い舌苔が引き起こすトラブル
舌苔が厚くなると、以下のようなトラブルを引き起こします。
口臭
口臭を引き起こす原因の一つが、舌苔に含まれるタンパク質です。口の中にある「嫌気性細菌」がこのタンパク質を分解する時に、嫌な臭いを発生させてしまいます。舌苔はタンパク質を多く含んでおり、厚くなると口臭が強くなる傾向があります。
唾液の分泌が少ない起床時や空腹時などに強くなる口臭は、生理的口臭と呼ばれています。誰にでも発生するものなので、正常の範囲内であればあまり気にする必要はありません。
しかし、「最近は常に口が臭うようになった」と感じたら、原因は厚くなった舌苔かもしれません。歯周病やむし歯など他の口腔トラブル、呼吸器系や消化器系の病気、糖尿病、肝臓疾患などが原因の場合もありますので、詳しくは歯科医やかかりつけ医にご相談ください。
味を感じにくい
舌には味蕾(みらい)という味を感じるセンサーがあります。味蕾の大部分は舌乳頭(舌の表面にある凸凹)にありますが、ここが舌苔に厚く覆われてしまうことで、味の刺激が味蕾細胞まで届きにくくなり、味を感じにくくなってしまいます。
味を感じにくくなると、ついつい調味料を足してしまって塩分を取りすぎてしまったり、食欲が失われて食事量が減ってしまうことがあり、高齢者の健康に影響を与えます。
誤嚥性肺炎のリスクが高まる
飲食物や口腔内の分泌物などが気管や肺に入ることを誤嚥(ごえん)と言います。誤嚥によって引き起こされる肺炎が誤嚥性肺炎です。
舌苔が厚くなると、誤嚥性肺炎を引き起こす細菌も口の中に増え、誤嚥をした時に一緒に細菌が気管や肺に入ってしまうリスクが高まります。
舌苔のケア方法
舌苔のケア方法について
様々なトラブルの原因にもなる舌苔をケアし、舌を清潔に保つにはどのようにすればいいのでしょうか。
舌を清潔に保つ方法
舌を清潔に保つには、1日に1回、専用の舌ブラシを使ってケアをします。
口の中が乾燥しやすい高齢者の場合には、事前に口腔用の保湿剤を舌苔に塗り、30秒ほど経過した後で舌ブラシを使用するのがお勧めです。
まずは、鏡を見て舌のどの部分に舌苔が付いているのかを確認しましょう。一番奥に舌ブラシをあてたら、手前に軽く引きます。
舌ブラシを水道水で洗いながら、5回ほど繰り返します。舌苔を完全に取り切ってしまおうと考える必要はありません。舌苔の中に空気が入るだけで口臭の原因菌の繁殖を抑えることができます。
ケアは起床時がお勧めです。さらに気になる人は、ケアの後に薬用の洗口液を使うと良いでしょう。舌ブラシは歯ブラシと同様に、1ヵ月を目安に交換をしてください。
過剰に取ろうとするのはNG
舌のケアをする時に気を付けたいのは、過剰に舌苔を取ろうとしないこと。歯ブラシでゴシゴシと舌の表面をこすってしまうことがありますが、舌を強くこすってしまうと、舌の粘膜や味蕾細胞を傷つけてしまう可能性があるので注意しましょう。
心配な時には
舌や口腔のケアを続けてもトラブルが改善せず、舌苔がなかなか薄くならないということがあれば、歯科医や歯科衛生士、かかりつけ医に相談をしてください。
舌苔の予防方法
最後に、舌苔の予防方法を確認しておきましょう。
舌を動かす
嚥下(えんげ)体操をしたり、よく噛んで食べたり、お話をしたり、歌を歌ったりなど、舌を動かすことを意識して生活しましょう。
舌を動かすことで唾液の分泌が促進されると、舌苔を予防できるだけではなく、口腔内の健康が向上しますし、消化しやすくなるなどの様々なメリットがあります。
口の中を清潔にする
歯磨きに加えて舌のケアを起床時に行い、口の中を清潔に保ちましょう。口腔用の保湿剤や洗口液も併せて使うのがお勧めです。
歯ブラシや舌ブラシだけではなく、口の中の状態に合わせて使い捨ての口腔ケア用のスポンジ、綿棒、口腔ケア用ティッシュなどを使用してもいいでしょう。