歯肉増殖症
薬物性歯肉増殖症とは、薬の副作用で歯肉が増殖する(歯ぐきが腫れる)病気のことです。「薬物性歯肉肥大」と呼称されることもあります。
腫れは軽度であることもあれば、歯が見えなくなるくらい大きく腫れ上がることもあります。
薬物性歯肉増殖症は、薬物の作用によって、歯肉の内部にある線維組織の増殖や肥厚が促されることで生じると考えられています。
薬物性歯肉増殖症を副作用とする薬物には、抗てんかん薬であるフェニトイン、高血圧症に用いられるカルシウム拮抗剤であるニフェジピン、免疫抑制剤であるシクロスポリンが挙げられます。
特にフェニトインは、長期に服用することで約半数の方が歯肉増殖症を発症するといわれており、重度の場合には外科的治療が必要になることもあるため注意が必要です。
薬剤性歯肉増殖症は、上記の薬物を服用しさらに口腔内が不衛生な方に起こりやすいといわれています。歯肉が腫れることでブラッシングなどによる口腔内の衛生管理が行き届かなくなるため、さらに症状が悪化するという悪循環に陥ることが多々あります。
原因
薬物の影響で、歯肉の内部に存在する線維芽細胞が異常増殖することが原因であると考えられています。線維芽細胞とは、結合組織の一種であるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの弾力性のある成分を作り出す細胞です。
つまり、薬剤性歯肉増殖症は単に歯肉が炎症などによって腫れるのではなく、歯肉の細胞自体が異常に増殖することで体積が大きくなった状態です。
原因となる薬物としては、抗てんかん薬のフェニトイン、高血圧症に用いられるカルシウム拮抗剤であるニフェジピン、免疫抑制剤のシクロスポリンが有名です。
歯肉増殖は特に歯垢が溜まった状態の歯肉に生じやすいことが知られており、発症には歯肉の炎症反応などが関係していることが示唆されています。
症状
歯肉が増殖・肥大します。発症初期は、歯と歯の隙間の歯肉が腫れ、徐々に周囲の歯肉に病変が広がっていきます。線維芽細胞が増殖することで、歯肉が硬く腫れ上がりますが、痛みや出血などの症状は現れません。
症状が進むと、正常な歯が歯肉に覆いつくされたり、歯肉に押されて位置がずれたりすることもあります。また、歯の生え始めや生え変わりの時期の小児が発症すると、将来的な歯並びに大きな影響を残すことがあります。
また、進行すると口腔内の衛生状態が悪化して歯周病が引き起こされ、虫歯や歯肉の炎症などを併発することもあります。
治療
多くは、原因となる薬剤の使用を中止すれば歯肉の腫れも軽減します。
しかし、薬物の使用を中止できない場合や、高度な腫れによって口腔内の衛生環境が保てない場合、歯並びに影響が出るような場合では、腫れた歯肉を切り取る手術が行われることがあります。
また、薬剤性歯肉増殖症は、ブラッシング指導、歯垢や歯石の除去を行うことよって、病気の改善が期待できます。